メディア

【ラジオ出演8回目】不登校といじめの本質——“苦しい”を言葉にするために

この内容は、ラジオ番組『EVENING ECHOES』のコーナー【こころのいばしょ】(まえばしCITYエフエム 84.5MHz)放送日:2025.11.12 にて、石黒やちよが解説した内容をもとに制作しています。

この番組では、子どもたちや保護者の方が「こころのいばしょ」を見つけられるようなヒントをお届けしています。

さて、今日は「不登校といじめの本質」についてお話ししたいと思います。

📰ニュース紹介とテーマ導入

文部科学省の調査で、不登校の小中・高校生が42万人を超え、いじめの認知件数も76万件以上と過去最多となりました。

この数字の背景には何があるのか。
そして、いじめや不登校の“本質”とは何なのか。
「苦しい」と感じている子どもたちの声に寄り添う視点で、お話ししていきます。

なぜいじめ件数は増加したの?

いじめの定義が「当事者が苦痛を感じたらいじめ」と明言されたため、カウントとしては増加

なぜ減らないの?
→ 「いじめとは何か」の認識が社会全体で共有されておらず、抑止力が機能していない可能性がある

(2025年文部科学省 資料より)

📘いじめの定義と3段階構造

2013年施行の「いじめ防止対策推進法」では、こう定められています:

「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から心理的・物理的な攻撃を受け、精神的な苦痛を感じているもの」

つまり、本人が苦痛を感じたら、それはいじめ。場所は学校の内外を問いません。

いじめの3段階構造:

  • ① 受動攻撃:ため息、嫌味、無視など、遠回しでわかりにくい攻撃
  • ② 軽度のいじめ:からかい、仲間外し、悪口など
  • ③ 重度のいじめ:暴力、金品の要求、ネットいじめなど

特に①は周囲から見えにくく、本人だけが苦しさを抱えてしまうことが多いです。

🧠いじめの本質:心と脳のしくみ

いじめは“悪意”だけでなく、心の中の満たされない気持ちや脳のしくみが関係しています。

(脳科学者・中野信子さんの研究より)

  • 攻撃するとドーパミン(快感ホルモン)が出て、一時的にスッキリする
  • 仲間意識が高まりすぎるとオキシトシンが過剰になり、排除行動が強まる
  • セロトニンが減ると不安や衝動が強まる(ストレスや睡眠不足が影響)

いじめは「心の痛みを他人にぶつけることで、自分を守ろうとする行動」でもあります。
※心理学で「防衛機制」と呼ばれ、自分の心が壊れないように守る性質

🔁フラストレーションの連鎖

親 → 子 → おとなしい子へと、感情の連鎖が起こることがあります。
「自分がされたことを、他の誰かにしてスッキリする」構造です。

いじめの根底にはターゲットを「反撃してこない弱い存在」と見なす感情があります。

本当は言葉でイライラを伝えたい人がいるのに伝えられない時に自分の心を守るために誰かを悪者にしたり攻撃する理由作りを心の中で行います。(嫉妬などと同様。攻撃理由を自分の中で無意識に瞬時に作るので、意識するのはとても難しい)

だからこそ、日常の中、家庭での尊重や、感情を言葉にする練習が大切です。

🛤️対処のステップ

いじめへの対処は、次の3ステップで整理できます:

  1. NOを言う:「それは嫌だ」「やめて」と伝える練習。自分を大切にしていい。
  2. NOを言っても続く場合:公的相談窓口へ。
    文科省調査では、相談先の1位は担任(70%)、2位は家族(25%)。
    受動攻撃は見えにくいため、専門知識のある相談員の視点が必要。
  3. NOを言えない場合:公的相談窓口へ。

特に受動攻撃は、教師や親でも判断が難しいため、本人の「苦しい」という感覚を信じて相談につなげることが大切です。

相談に迷った時、自分の心が分からなくなった時のテクニック:
椅子に自分の脳を座らせるイメージで「今、何を大切にしたい?」「誰を大切にしたい?」「本当はどう思っている?」と問いかけてみる。

🚨警察への相談について

小学生でも刑法にふれるいじめを受けた場合、保護者や本人が警察に相談できます。

いじめの重大事態 1405件 全体(76万)の0.1%ですがその内の537件が小学生です(お金奪うなど警察介入)

  • 13歳以下は刑事罰にはならないが、警察の調査対象にはなる

  • 警察の調査査では保護者連絡・事実確認・児童相談所との連携が行われる

    群馬県では「少年サポートセンター」が窓口(中央児童相談所内、対象は19歳以下のおこさん・保護者)

    相談窓口の詳細はこちら

    最寄りの警察署の生活安全課でも相談可能ですが、ハードルが高い場合は児童相談所内の警察窓口「少年サポートセンター」がつながりやすいです。

☎️相談窓口の紹介

つなぐん相談ダイヤル(こども・不登校 電話相談)

📞 0270-26-9200

「話してみようかな」と思ったとき、

その先にいる人の声や心を知ることが、きっと背中をそっと押してくれるはずです。

🎁クロージング

いじめは、誰かの心の痛みが、別の誰かを傷つけるかたちで現れることがあります。

でも、その痛みを言葉にできたとき、連鎖は止まります。
このラジオが、誰かの「話してみようかな」というきっかけになりますように。

今日も“ひとりひとりの安心ないばしょ”を探すヒントになれば嬉しいです。