この内容は、ラジオ番組『EVENING ECHOES』のコーナー【こころのいばしょ】 (まえばしCITYエフエム 84.5MHz) 放送日:2026.7.22 にて、石黒やちよが解説した内容をもとに制作しています。
■ オープニング
こんにちは。石黒やちよです。
今日から3回シリーズで、 「こどもの才能をどう見つけていくか」 というテーマでお話しします。
まず最初に、文部科学省・厚生労働省・総務省の調査を見ても、 不登校の子どもや若者が抱える不安の上位には、 「将来への不安」「進路・就職への不安」 が必ず挙がっています。
総務省の「こども若者の意識調査」でも、 多くのこども・若者が 「将来が不安」 と回答しています。
不登校のこどもたちの大きな心配事は、 「未来が見えないこと」 です。
私の不登校の息子も同じように、 一番大きな心配事は 「将来自分はどうなるんだろう」 ということでした。
心配というのは、解決する道筋が見えないからこそ心に負荷がかかるものです。
それなら、どうしたらいいかという方法を具体的に知ることができれば、 思い悩む期間から行動フェーズに移ることができます。
見通しがつくと、すくなくとも心がすこしラクになります。
なので今回は、全3回シリーズでみなさんと一緒に「こどもの将来」を考えてみたいと思います。
■ 進路は「将来の仕事」からの逆算で決まる
では、進路や将来の仕事はどう選べばいいのでしょうか。
進路は 「将来の仕事」からの逆算 で決まります。 だからこそ、まずは「仕事」をどう選ぶかを考える必要があります。
「やりたい仕事」ではなく、 仕事のしやすさで選ぶという選択肢もあっていいと私は考えています。
- 仕事は負荷の少ない適性のあるものにして、プライベートを充実させる
- 仕事に意義を感じて、やりがいと適性を活かす
どちらも、その人の価値観で尊重されるべき生き方です。
ここで厚生労働省が示している 「仕事選択のために必要なこと」 を見てみたいと思います。
仕事を選ぶときに必要なのは、
- 興味(価値観)
- 能力(特性)
- 環境(適合)
の3つです。
これは厚生労働省の職業情報サイトでも整理されています。
大切なのは、
- 自分の特性をつかむこと
- 自分の能力を把握すること
- 自分の興味を知ること
です。
■ このシリーズは「こどもの安全基地 → こどもの才能発見の方法 → 親の安全基地」の順番でお話します
第1話:こどもの安全基地の作り方
才能を見つける前に、まず心の土台を整える。
第2話:こどもの才能発見の具体的方法
適性テスト・WISCで方向性を探す。
第3話:親自身の安全基地の作り方
親が安全基地を手にすると、こどもも安全基地を手に入れられる。
今日はその第1話。 「こどもの心の安全基地をどうつくるか」 をお話しします。
■ 第1章:つきたい仕事についても辞める人々
特性のある方の1年以内離職率は約30%。
これは一般の新卒者(1年以内で約10%)と比べるとかなり高い数字です。
この要因は 環境と特性のアンマッチ と言われています。
自己肯定感が低いと、 仕事選択に必要な3つの軸が“見えなくなる”ことがあります。
- 興味がわからない
- 得意がわからない
- 自分に合う環境がわからない
- 自分の価値がわからない
- 他者比較で自分を見失う
だから、才能があっても、努力しても、 興味(価値観)・能力(特性)・環境のいずれかがアンマッチして、 苦しくなって辞めてしまうということが起こります。
自己肯定感が低くて自分軸を持てないと、 結果として自分にあう環境や道が選択できず、 人生がつらくなります。
こどもの自己肯定感について見直していきたいと思います。
前回のお話では、 自己肯定感は境界線から作られるという話をしました。
自己肯定感・境界線の根っこには、 「子どもの頃に、親からどう扱われてきたか」 が深く関係しています。
■ 第2章:実はこどもの自己肯定感は“親の態度”で変えることができる
子どもは、 親が自分をどう扱っているかを手がかりにして 「自分はどんな存在なのか」 を決めていきます。
つまり、 自分の自己像、自分が大切にされる価値がある存在なのかどうかは、 親の態度をトレースして育ちます。
学術論文でも、以下のような親の態度が子どもの自己像に影響すると示されています。
- 感情を否定される → 自己否定が育つ
- 比較される → 自分で肯定できず、他者評価・他者比較に依存する
- 押しつけられる → 自分の内側に価値を感じられない
- 尊重されない → 境界線が育たない
この構造が、 大人になってからの自己嫌悪やあきらめ、脆さにつながることがあります。
■ 第3章:後天的に書き込まれた「心のクセ」は書き直すことができる
医療の世界では、 幼少期に感情を否定されたり、比較されたり、 境界線を守ってもらえなかった経験があると、 成人後に「心のクセ」として残ることがあると言われています。
(参考:https://youtu.be/OB3dCn7XG2A?si=sUk83kZl1GfbIJD6)
例えば:
- 理由のない不安
- 他人の顔色を読みすぎる
- 感情がわからなくなる
- 人間関係の距離感が極端になる
- 自分を傷つける行動をしてしまう
でも、ここが大事です。
これは性格ではなく、 後天的に苦しい環境にあうように学んだ心のクセ です。
クセなので、 同じように 親の関わりで“書き換え”もできます。
■ 第4章:こどもの心の安全基地の必要性
不登校のこどもたちは 心を守るために行動している ことがあります。
- 学校に行けない
- 人と関わるのが怖い
- 自分の気持ちがわからない
- すぐに疲れてしまう
これは「弱い」からではなく、 心の境界線が薄くて、外側の刺激から自分を守っているから起こることです。
だからこそ、 進路や将来の話をする前に、 まず こどもの心の安全基地をつくって、自分の心を出してもいい、安心感をつくることが必要 なんです。
■ 第5章:今からでもできる。こどもの自己肯定感の為に親ができる4つの行動
① こどもを下にみない
「すこし待っててね」 「待っててくれてありがとう」
他の人に対する態度と同じようにひとりの人間として対等に接するだけです。
これは甘やかしではなく、存在の承認です。
② ありのままの気持ちを受け止め、言語化する
「怖かったんだね」 「緊張したんだね」 これによって心を出してもいいことを学び、 自分の感情に名前をつけて対応できるようになります。
③ 意見をきく・選択を渡す・尊重する
「どうしたい?」 「どっちがいい?」 これはこどもに価値があることを体感させ、主体性を育てる行為です。
④ 親の価値観(マイルール)を押しつけない
押しつけられると、 「自分の内側には価値がない」と感じる。
尊重されると、 「自分の内側には価値がある」と感じる。
■ 第6章:まとめ
才能を見つける前に、まず こどもの心の安全基地をつくる。 子どもの心のクセ(自己像・自己肯定感)は、親の態度をトレースして育つ。 親が安全基地を提供できると、心のクセは 上書きできる。
だからこそ、 進路の話をする前に、まず 心の安全基地を整えることが必要。
そのうえで、次回の第2話ではいよいよ、 才能発見の具体的な方法 をお話しします。
無料でできる公的機関の適性テスト、 そして WISC のお話もします。
今日は、 その前提となる「心の土台」を一緒に整える時間でした。
出典
■ 文部科学省の調査
文部科学省. (2024). 不登校児童生徒の実態調査報告書. 文部科学省.
■ 厚生労働省の調査
厚生労働省. (2022). 若者の意識調査(令和4年度). 厚生労働省.
■ 総務省の調査
総務省. (2023). こども若者の意識調査. 総務省.
https://www.soumu.go.jp/main_content/000892979.pdf
■ 厚生労働省(職業情報提供サイト:jobtag)
厚生労働省. (n.d.). 職業情報提供サイト(jobtag).
https://shigoto.mhlw.go.jp/
■特性がある人の離職率
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター. (2017). 障害者の就業状況等に関する調査研究(調査研究報告書No.137).
https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku137.html
📚 APA形式:学術文献リスト
- Barber, B. K. (2009). 親の心理的統制と子どもの発達(小野寺敦子・高橋一公・訳). 風間書房. (原著2002年出版)
- Bowlby, J. (1995). 母子関係の理論 第1巻 愛着(黒田実郎・大羽勝道・訳). 岩崎学術出版社. (原著1969年出版)
- 岡田努 (2000). 自己評価の構造と親の養育態度との関連. 心理学研究, 71(5), 370–377. https://doi.org/10.4992/jjpsy.71.370
- 櫻井茂男 (1992). 自立性と自己肯定感の発達に果たす親の養育態度の影響. 教育心理学研究, 40(3), 278–288. https://doi.org/10.5926/jjep1953.40.3_278
- ロジャーズ, C. R. (2015). ロジャーズ選集(上): カウンセリングと心理療法(伊東博・訳). 誠信書房. (原著1951年出版)
- Barber, B. K. (1996). Parental psychological control: Revisiting a neglected construct. Child Development, 71(6), 3296–3319. https://doi.org/10.2307/1131772
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- Rogers, C. R. (1959). A theory of therapy, personality, and interpersonal relationships, as developed in the client-centered framework. In S. Koch (Ed.), Psychology: A study of a science (Vol. 3, pp. 184–256). McGraw-Hill.