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ラジオ出演16回目 こどもの才能発見③──進路と将来の仕事の選び方 3回目/全3回


こどもの才能発見③──親自身の安全基地のつくり方
2026.09.09 / ラジオ出演 第16回



この内容は、まえばしCITYエフエム『EVENING ECHOES』内コーナー【こころのいばしょ】
2026年9月9日の放送内容をもとに制作しています。

才能発見シリーズの最終回となる今回は、
「親自身の安全基地」 がテーマです。

第1回では、子どもが未来を考えるためには「心の安全基地」が必要だという話をしました。
👉 第1話を見る

第2回では、厚生労働省の適性検査やWISCを使い、
能力 → 価値観 → 興味 → 認知特性
の順番で「やりたい仕事」だけではなく、特性から職業を探す方法を紹介しました。
👉 第2話を見る

才能発見シリーズ最終回となる今回は、「親の心の安全基地」についてです。
親の心が整うことが、子どもの才能発見の第一歩になる理由
をお話しします。

■親=環境

子どもは、親の心の状態を「環境」として吸収します。

  • 親の表情
  • 声のトーン
  • 言葉の選び方
  • 不安や焦り

こうした“親の心の揺れ”は、子どもの安全基地に直接影響します。

発達心理学者バーバー(Barber, 1996)は、
親の心の揺れ(心理的統制・不安・過干渉・感情の揺れ)が
子どもの心の揺れ(不安・無気力・自己否定感)を強めることを示しました。

文科省の不登校調査でも、
不登校の主因の約半数が「無気力・不安」とされています。

つまり、子どもの不登校は「子どもの問題」だけではなく、
親の心の揺れからも起きることがある。

これは親を責めるための話ではありません。
親自身も、過去の環境の中で必死に生き抜いてきた結果として形成されたものだからです。

逆を言うと親の心の揺れ回復からこどもの不安回復にアプローチできるということです。

■不登校の背景にある「2つの要因」

① 先天性の特性
発達特性、処理速度、感覚過敏、認知特性など
👉 認知特性について知りたい

② 愛着の揺れ(環境要因)
親の不安、焦り、境界線の揺れなど。
👉愛着について知りたい

家庭が安全基地にならないと、
子どもは外のストレスから回復できず、
「無気力」「不安」「不登校」という形でSOSを出します。
👉 不登校の根本原因について知りたい

■親自身にも「心の癖」がある

ここで少し、私自身の話をします。

私は、息子の支援の関係で自分の育った環境も専門家に話したとき、
「それは虐待と言っていい育ち方でしたね。”マイナスのかけら”が積もっていたんですね。辛かったですね」
と言われました。

暴力が日常的にあったわけではありませんし、
いわゆる“虐待”というイメージとは違っていたので、正直とても意外でした。

そのあと、兄弟間差別や性差別も虐待にあたること。(児童虐待防止法第2条第4号、こども家庭庁の解説による)

毒親というキーワードも知りました。

その言葉を聞いた瞬間、
自分がずっと抱えてきた苦しさに、初めて名前がついた
そんな感覚がありました。

「これまでの生きづらさには理由があったんだ」
「私の感じてきた痛みは、思い込みじゃなかったんだ」

そう思えたことで、ようやく自分の心の癖を見つめはじめることができました。

■”マイナスのかけら”の正体

私が考える“マイナスのかけら”とは、
親の主観で子どもの主観を塗りつぶしてしまうこと
だと思っています。

  • 子どもが感じたこと
  • 子どもが思ったこと
  • 子どもの価値観
  • 子どもの意見

これらを「違うよ」「それじゃダメだよ」と否定してしまうこと。

本来は「あなたはそう思うんだね」という言葉で子の境界を尊重し
伝えたいことがあれば「ママはこう思うんだ」と自分の意見として伝えたら良いのですが、それができない。

でもそれは、自分がダメな人間だからではなく
親自身も親世代から同じようにされてきたので、境界を尊重する接し方を学ぶ機会がなかったからです。

■親が子どもに“甘えてしまう”という現象


もうひとつ、私自身の体験から気づいたことがあります。

私はある時、息子からの愛情で、親からもらえなかった愛情を埋めようとしている自分に気づきました。

これは臨床心理学で「役割逆転」と呼ばれる現象で、
子どもが親の心の穴を埋める役割を背負ってしまう、とても危険な状態です。

支援者と話しながら気づき、「これは息子に甘えている」と理解して、
みなさんに愚痴を聞いてもらったり、ヒントをいただきながら少しずつ手放してきました。

■自分の”マイナスのかけら”に気づくのは難しい

自分の”マイナスのかけら”に気づくのはとても難しいです。
なぜなら、そこには2つの痛みがあるからです。

  1. 自分の親が未熟だったと気づく痛み
  2. 自分が子どもに対して加害者になっているかもしれない痛み

これは脳の生存本能に直結するほどの痛みです。

幼い子は親から価値を感じてもらえることで居場所と衣食住を確保でき、安心につながります。
その安心が欠けてしまうと生存本能を揺るがす不安となります。
虐待を受けている子供は親が間違っているのではなく、自分が間違っている、と自分を責めます。
(混乱型愛着(無秩序型)、および、それに伴う解離的な反応)
虐待を受けている子が親をかばう事例はこの心理からです。

だからこそ、
気づくこと自体が、ものすごく勇気のいる行為です。

■マイナスのかけらを見つけるヒント

私が提案したい第一歩は、とてもシンプルです。

自分のことを大切にできるか、できないか。
自分のことを好きか、嫌いか。
そっと確かめてみること。

親から否定され続けると、
「ありのままの自分ではダメだ」と思い込み、
親からの愛情を求めて自分を抑えつけ「親が求める別の誰か」になろうとします。
自分の想いを大切にできなくなる。
けれど人は自分以外の誰かを24時間、毎日演じ続けるのは無理です。
そうすると「親に求められている別の誰か」になれない自分のことを嫌いになりやすくなります。

これが、”マイナスのかけら”が心に残っているサインになります。

■世代間連鎖を止める方法

それは、とてもシンプルです。

① 子どもの感じたことを否定しない
② 自分の感じたことも否定しない

この2つができると、
親子の境界線が整い、
心の連鎖が止まり始めます。

■親も安全基地を持っていい


毒親育ちの方は、
「自分は大切にされていい存在だ」という感覚──
自己肯定感が育ちにくい傾向があります。

その心の癖を大人になってから変えるのはとても難しい。
だからこそ、外側に自分のための安全基地を持つことが大切です。

  • 自分の気持ちを安心して話せる場所
  • 否定されずに受け止めてもらえる場所
  • 子どもの支援と同時に、自分自身も支えてもらえる場所

■公的支援は「親の安全基地」になれる


つなぐん
スクールソーシャルワーカー
市町村の子育て相談
教育相談センター
不登校支援窓口

つなぐん相談ダイヤル(こども・不登校  群馬県教育委員会)
📞 0270-26-9200
※匿名OK・相談無料。保護者の心情のつらさも相談できます。

支援者は、
子どもの支援だけでなく、
親自身の心の安全基地にもなってくれます。

■ひとりで負の連鎖を止めるのは絶対に無理

ひとりで挑戦しようとせず、外部を頼りましょう。

親が自分の「心の癖」や「過去の傷」に向き合うことは、
脳の生存本能に触れるほどの痛みがあります。

ひとりで連鎖を止めようとすると、
心が壊れてしまうことがあります。

だからこそ、頼ってください。
さっき紹介したような場所が、きっと力になってくれます。

■才能発見は、ここから始まる


子どもの才能は、
テストの結果でも、
偏差値でも、
学校の評価でもなく、

「自分の感じたことを安心して言える環境」から芽が出ます。

その環境をつくるために必要なのは、
親が自分の中の”マイナスのかけら”に気づき、
子どもの主観を否定しないこと。

これが、こどもの才能発見の第一歩です。


参照文献(APA形式)

Barber, B. K. (1996). Parental psychological control: Revisiting a neglected construct. Child Development, 67(6), 3296–3319. https://doi.org/10.2307/1131772
(※本文中:親の心理的統制、主観の塗りつぶし、不登校・無気力の背景)

Boszormenyi-Nagy, I., & Spark, G. M. (1973). Invisible loyalties: Reciprocity in intergenerational family therapy. Harper & Row.
(※本文中:「役割逆転 / 親子逆転(Parentification)」の概念を家族療法で確立した原典。親の心の穴を子どもが埋めようとする病理の分析)

Byng-Hall, J. (2002). Relieving parentified children’s burdens in families with insecure attachment patterns. Family Process, 41(3), 375–388. https://doi.org/10.1111/j.1545-5300.2002.41307.x
(※本文中:不安定な愛着を持つ親と子の「役割逆転」が子どもの重荷になる構造と、その解消に関する論文)

Main, M., & Hesse, E. (1990). Parents’ unresolved traumatic experiences are related to infant disorganized attachment status: Is frightened and/or frightening parental behavior the linking mechanism? In M. T. Greenberg, D. Cicchetti, & E. M. Cummings (Eds.), Attachment in the preschool years: Theory, research, and intervention (pp. 161–182). University of Chicago Press.
(※本文中:虐待環境などで生じる「恐れをもたらす安全基地(親)」と「親をかばいすがりつく生物学的矛盾・混乱型愛着」を解明した文献)

数井みゆき・遠藤利彦・田中亜希子・坂上裕子・菅沼真樹 (2000). 日本人母子における愛着の世代間伝達. 教育心理学研究, 48(3), 323–332. https://doi.org/10.5926/jjep1953.48.3_323
(※本文中:「心の連鎖」「親世代から受けた関わりが次世代に引き継がれる」ことの実証)